2018-09-01

「低コストのインデックスファンドを選びましょう」という話はよく聞きますよね。

おそらく「低コスト」という基準の選定方法で「80%」は正解だと思います。

今回は、残りの「20%」について、インデックスファンドを実際に運用していたからこそ分かる視点を加えて「インデックスファンドの選定ポイント」を解説したいと思います。

<筆者の情報>
香川功行
国内外の金融機関でファンドマネジャー、アナリストを経験後、金融商品の設計業務。その後海外投資法人を設立し、運用業務。インデックスファンドのファンドマネジャー、株式指数の開発・研究、小型株ファンドのファンドマネジャーなどがバックグラウンド。

インデックスファンドを選ぶポイント(プロの視点)

まずは結論から

・その①:ノーロード、無分配(年一回決算)、信託報酬が最低水準のファンドに絞る
・その②:トラッキングエラー(TE)はあまり関係がない
・その③:パフォーマンスが良いファンドを選ぶ
・その④:海外ETFはバンガード社のETFが最適


理由を解説していきます。

その①:ノーロード、無分配(年一回決算)、信託報酬が最低水準のファンドに絞る

「これはもう知っているよ」という方も多いと思いますので、その場合は「その②」からお読みください。

以下、特に断りがない場合は簡略化のため、国内投資信託(ETFを除く)を想定しています。

<ノーロード>
ノーロードファンドとは、販売手数料がかからないファンドをいいます。

販売手数料は、証券会社などの販売会社がある程度自由に設定することができます。全く同じ金融商品にもかかわらず、購入時の手数料は販売会社により異なります。

一般に、ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)ではノーロードファンドの取り扱いが多い傾向にあります。

ファンドを絞り込む際にも「ノーロード」で絞り込める証券会社のサイトもありますのでチェックしてみるといいでしょう。


<無分配(年一回決算)>
これもよく言われていることですが、分配金が多いファンドが良いファンドであるということはありません。

運用成績に関わらず運用会社ではある程度自由に分配金の額を設定できます。
投資家に分配金が支払われると、その分基準価額が下落するだけなので、「分配金」と「運用成績」に直接の関係性はありません。

疑問に思われるのであれば「毎月分配 デメリット」などで検索してみるのも良いでしょう。ファンドでの分配に関してのデメリットについて、具体的な数値例も出ているサイトもあるようです(ここでは省略します)。

分配金は受け取ってすぐに再投資しなければ、複利の効果を享受しにくくなります。再投資した場合でも、一度税金が引かれた金額が再投資に回されるので、運用の効率が低下してしまいます。

決算が年一回で、かつ、分配金を過去に出していない無分配ファンドは、運用会社側が長期保有を前提とした(ある意味で、情報強者の)投資家をターゲットにしていると考えることもできます。


<信託報酬>
信託報酬(運用管理費用)は、投資信託を保有している期間にファンドから支払われる手数料です。

例えば、投資金額が100万円で、信託報酬が0.5%のファンドを購入する場合、信託報酬は年間で100万円×0.5%=5,000円です。

信託報酬は日割りで毎日基準価額から差し引かれます。

少しの信託報酬の違いで、将来の長期的なパフォーマンスに大きく影響しますので、できるだけ信託報酬率の低い金融商品を選ぶのが基本となります。

その②:トラッキングエラー(TE)はあまり関係ない

基本的にトラッキングエラーを見る必要はありません。

トラッキングエラー
ファンドのリターンとベンチマークのリターンとの乖離の大きさを示す指標。
ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンとの差の標準偏差。数値が大きいほど、ポートフォリオの動きがベンチマークから乖離していたことを示す。

「トラッキングエラー(TE)って何?」という方は上記の意味だけを確認しておき、特段、気にする必要はありません。

私自身、過去にインデックスのファンドマネジャーとしてTEの管理をしてきましたが、自分がインデックスファンドを購入する際にTEをみて判断に含めることはほとんどありません。

TEの水準を確認することに、あまり意味はありません。

理由は2つあります。

1つ目は「計算しても正確な評価ができないから」です。

一部の投資家の方が「ベンチマークとの乖離が・・・」「TEの水準が・・・」がという内容の議論をされているのをみることがあります。しかし、インデックスファンドのTEは要因毎での分解ができてこそ評価ができます。一般に、ファンドマネジャーはじめ、そのファンドの運用に関わっている内部者にしかそれはできません。

簡単な例をあげると、ファンドの基準価額です。基準価額は整数ですよね。なぜ毎日の基準価額が必ず整数になるのか、それは単純に算出の際に「四捨五入」をしているからです。

この「四捨五入」の要因もTEの一部です。

さらに、マザーファンドに投資をするファンドは、そのマザーファンドの基準価額の四捨五入の要因もTEに影響します。

実際は、多様に存在する要因に分解することで、ようやくTEを評価できるようになります。TEの水準だけみても意味がないのです。

TEの件は、下記の別の項目で再度詳しく説明します。


2つ目は「そもそもTEが過度に高まる運用ができないから」です。
(BMとの乖離はチャートで見る程度で良いでしょう)

普通の運用会社であれば、過度にTEが高めてしまう運用をすることは、まずありえません。

仮に、誰が見ても気がつく水準にTEが上昇する(大きな乖離がでる)ミスが生じた場合は、その取引を運用会社の負担で訂正(原状回復)し、基準価額も、投信協会等に連絡をしたうえで適正に訂正(基準価額訂正)する必要があります。

当然、各種規定に鑑みても、運用者のミスによる不利益が、受益者(投資家)の負担になることは考えられません。

そのため、もしどうしてもTEが気になるのであれば、ベンチマークとのパフォーマンス比較をチャートで見るくらいで十分だと考えます。

その③:パフォーマンスが良いファンドを選ぶ

インデックスファンドのファンドマネジャーの能力は何を見れば分かると思いますか?

それは「パフォーマンス」です。
(社内評価はともかく、私はそう考えます)

「インデックスファンドは指数に連動するファンドだから、指数への連動性(TE)が評価の対象のはずだ」と思われるかもしれません。

実はそれは違います。「パフォーマンス」が極めて重要といえます。

通常、会社内ではTEで運用が管理はされていますが、インデックスファンドのファンドマネジャーの「真の実力」はパフォーマンスに表れます

ファンドの内部では、資金流出入が生じていて、日々、先物や現物株式等の売買をしています。そして、ファンドマネジャーがファンドの内部で発生するコストに対してどのような規律に従って取り組んでいるのか、これが「パフォーマンス」に表れるのです。

この「規律」というのは、法令諸規則や社内規則等を超えた、極めて細部の投資行動に対しての「規律」です。

インデックスファンドは誰が運用しても同じだと思われているかもしれませんが、実はそれは違うのです。

私の経験測にはなりますが、信託報酬が年率0.02%程度の差でしたら、パフォーマンスが6か月、1年、3年で上回っているファンドを選んだ方が良いと考えます。

その④:海外ETFはバンガード社のETFを選ぶ

インデックス業界大手のバンガード。信頼度も抜群で元同業者からみてもインデックスファンドの運用管理において優秀であると、私は認識しています。

急に淡白な解説になりましたが、本当にそれだけの価値があります。

競争力の高いバンガード社のETFは相対的に経費率も低いことが多いです。経費率と簡単に直近のレポートを確認する程度の検討で、自分の資産運用に適したものを選んで良いと考えます。

実際、私自身、何名かのファンドマネジャーを知っていますが、信頼に足ると考えます。

正直なところ、他方、国内投信会社が設定したインデックスファンドをみると、信託報酬は低く設定しているものの、運用は「あまり上手くない」という印象を持つことがあります。

詳しい情報①:連動対象が「配当込み指数」「配当込でない指数」の違いを気にする必要はない

インデックスファンドの連動対象が「TOPIX(配当込み)」「TOPIX」などのように「配当込み指数」「配当込でない指数」が混在していて分かりにくい、というご指摘が運用会社側によくあります。ごもっともです。

まず、心配しなくても、連動対象が「TOPIX」であっても「TOPIX(配当込み)」に連動することになります。

運用会社によっては、「配当込み指数」「配当込でない指数」の商品設計をあまり考えていない場合があります。

強いて経緯をあげるとすれば、例えば「日経平均(配当込み)」という指数の名称はあまり聞かないですよね。それを理由に、認知度の高い指数名称での表記が採用されることがあります。この場合であれば「日経平均」を連動対象とする指数名称に記載するということになります。

また、別の運用会社では、指数ベンダー(日経平均であれば「日本経済新聞社」)との指数の使用契約上の名称で一致させるケースもあります。

分かりにくいのはもっともだと思いますが、結論としては、投資家の皆さまには不利益にはならないと考えます。

ネット上では『配当込みでない指数に連動するファンドが、ある日突然、配当分のパフォーマンスが劣化することになっても、目論見書の表記通りなので文句は言えない』という意見もあるようですが、そのようなことは、まずあり得ません。事後的にファンド内で配当分相当の収益を減らすことができる根拠は、どこにもないからです。

詳しい情報②:トラッキングエラー(TE)について少し詳しく

すごくマニアックなテーマなので、ご興味がない場合は飛ばして読んでください。
本当に余談です。

インデックス投資家の方には、相当マニアで是非知りたいという方がいましたので少しだけ細かく記載します。

トラッキングエラー
ファンドのリターンとベンチマークのリターンとの乖離の大きさを示す指標。
ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンとの差の標準偏差で。数値が大きいほど、ポートフォリオの動きがベンチマークから乖離していたことを示す。

インデックスファンドではTEを管理しながら運用が行われます。

TEの主な要因は、次の通りです。

・配当要因(プラス寄与)
・信託報酬(マイナス寄与)
・売買コスト、スプレッドコスト(マイナス寄与)
・証券保管フィー(外国資産の場合、マイナス寄与)
・税金(特に外国資産の場合、マイナス寄与)
・基準価額の四捨五入要因(マザーファンドも同様、プラスor マイナス寄与)
・先物と現物の価格乖離等(プラスor マイナス寄与)
・インデックスとポートフォリオの証券評価の相違(プラスor マイナス寄与)
・為替評価の相違(プラスor マイナス寄与)
・最適化法による乖離(プラスor マイナス寄与)
・投資先ファンドにおける信託財産留保額(場合によっては、マイナス寄与)

運用会社では、何の要因で起因したTEなのかを分析(要因分解)をします。

先ほどお話した「配当込みでない指数」に連動するインデックスファンドでは、配当の要因を別枠で設けてTEを測定することがあります。あるいは、社内で管理するうえでは「配当込みの指数」を使用します。

TEの計測期間も会社によって異なりますが、短期のTE、長期のTEと複数で計測して管理するのが一般的です。

例えば、日次のTEを計測します。信託報酬の土日分は月曜日の基準価額から3日分一度に引き落とされるので、月曜日は信託報酬の要因は平日に比べて3倍に跳ね上がるなど、それくらい詳細な要因分解が行われます。

ファンドの資金流出入の増減が激しい期間は、先物を多めに保有して準備することがあります。その場合、短期のTEは高まります(先物と現物株式の価格差の影響)。
しかし、一方で、現物売買によるコストは抑えられるので、長期TE低下の可能性を残します。

つまり、短期TEを気にするあまり、長期TEを高めてしまうことがあります。この辺がファンドマネジャーの腕の見せ所です。

ETF以外の投資信託では、ロングポジション(買い持ちしている)の投資家しかいません。上記のように短期TEの最小化だけ狙って、先物を使わずに現物株式を売買の頻度を上げてしまうと、売買コスト分のパフォーマンスを低下させてしまい、ある意味ダメなのです。(ファンドマネジャーがどのように規律を考えているかによりますが)

かなりマニアックですね。今回はここまでにします。

詳しい情報③:無分配ファンドで突然分配が支払われることがある

前述のとおり、ファンドの分配金に関しては無分配(年一回決算)がベストだと考えます。

しかし、折角、無分配のファンドを買っても、購入後に分配してしまうことが稀にあります。

その理由は「運用業界には、ファンド内に利益をため込んで分配をしないでいると税金を繰り延べていると国税庁から指摘を受ける可能性がある」という都市伝説的な話があるためです。

実際、そういう可能性があるなら、(数年1回だけor少額だけというように)分配をしようと考える運用会社もあるようです。

ちなみに、私が勤務していた運用会社(数社程度)では、そのような指摘があったことはありませんでした。この辺はかなりデリケートな話題なのでここまでとします。

どちらにしても、その場合は今後も分配が続くのかを、次回の分配を確認するまで分かりませんが、チェックしていく必要があります。それと同時に、分配金額から税引後での再投資による運用効率の低下がどの程度に収まるのかを精査していくしか方法はなさそうです。


今回は以上です。

~この記事の著者~

香川 功行

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