2018-09-05

最近では、海外を拠点に活躍する「フリーランス」「投資家」「経営者」などの方たちが急増しています。また、引退世代が海外移住をされることも、今では全くめずしい光景でなくなりました。

人の職業観、人生観も多様性が増しています。日本人の生き方も、例外なくグローバル化の波が押し寄せています。

しかし、グローバル化の流れの中にあっても、資産運用に関する指南内容は、概して「日本円」を基準として検討されていることが多いのではないでしょうか。
(昨今は、翻訳本が多いので念のためですが、米国で出版された資産運用の書籍であれば、「米ドル」を基準で語られることが多くあります)

海外の投資家においては

『自分の資産運用は「日本円」基準の考え方に偏りすぎてはいないだろうか?』

というような疑問を持たれる方もいるようです。

今回は、そのような疑問に対する1つの回答として「グローバル視点による資産運用」について説明していきます。

「グローバル視点による資産運用」ポイント

まずはポイントの整理です。

・ポイント①:多くの日本人が円を基準に価値の最大化を目指す
・ポイント②:日本人の生活環境が多様化してきた
・ポイント③:基準となる「ベース・カレンシー」はどの国の通貨が最適か?
・ポイント③:実質的な居住地によって税制が変わる


順番に解説していきます。

ポイント①:多くの日本人が円を基準に価値の最大化を目指す

多くの日本人が「日本円」基準に価値最大化を目指す資産運用を行っていると思います。

日本で生活をしていれば「日本円」で支払ったり、受け取ったりすることが多いからです。

日本で働いた賃金は大抵「日本円」で支払われますよね。
積極的な資産運用をしていないのであれば、銀行などの金融機関に円で貯金をされている方も多いでしょう。また、公的年金の受け取り、これも日本円で振り込まれます。

短期間の海外旅行であれば、現地通貨が必要なとき、両替店で日本円から現地通貨に両替するケースがほとんどだと思います。

これらは極めてあたりまえのことです。
日本で生活する限りは、日本円で「決済」が大半を占めるので、資産運用をするときも「日本円」基準に検討していくことに違和感はないと思います。

「日本円」基準と言っても、日本株や日本国債などの円建て資産への投資を意味している訳ではありません。あくまでも基準時点が「日本円」であって、当然、外貨建て資産へ投資をすることも想定できます。

仮に、その外貨建て資産への投資が上手くいき、どこかの時点でその資産を取り崩し、何かを購入したいと考えることもあるでしょう。その際に日本で生活しているのであれば、一般的には外貨から円に換金し、それを「決済」に使用することになると思います。

このように日本で生活する限りにおいては、決済時に「日本円」を使用することになりますので「日本円」を基準(ベース・カレンシー)として、価値最大化を目指す資産運用をしていくことは、自然な考え方といえるでしょう。

ポイント②:日本人の生活環境が多様化してきた

日本人の生活環境も「多様化」「グローバル化」が進展してきています。

私はシンガポールを拠点にアジア周辺の地域で仕事をすることが多いのですが、海外のコワーキングスペースを覗けば、以前よりも日本人の姿が多く見られるように感じています。

先日は、タイ「チェンマイ」のスターバックスにて、おそらく海外移住をした日本の年金生活者だろう、と感じる会話を耳にすることもありました。

一昔前は「日本に生まれて、日本で生活し、日本の学校に通い、日本の会社に就職する」ドメスティックな生き方が主流だったと思います。しかし、その頃と比べて、当たり前のように日本でい続けるような意識は、薄くなってきたのではないでしょうか。

自分の価値観を大切にして、居住する国を自由に選択しやすい時代にもなりました。社会のグローバル化が進展するなか、このような動きは今後益々加速していくものと思われます。

特に海外居住者からは、

「海外で生活していると、現金(投資資金以外の生活資金)を日本円で保有していることがリスクに感じる」

という声が聞かれます。

こうした生活していく中での「感覚」は資産運用においても重要なものだと私は考えます。特に新興国など「信用度の低い国」や「対円レートの変動性が高い国」に住んでいる方は、そのような感覚を覚えることだと思います。

ポイント③:基準となる「ベース・カレンシー」はどの国の通貨が最適か?

(ベース・カレンシー・ストラテジー)
少しグローバルな視点で考えていきましょう。

世界の投資家の中には、必ずしも自国通貨での価値の最大化を目標とする資産運用を行って「いない」方々もいます。

例えば、トルコなど政治情勢が安定しない国では、自国通貨であるトルコリラを基準とするのではなく、米ドルの価値での最大化を目標としている投資家が多く存在します。

政情不安定な国の例だと直観的にもわかりやすいですよね。

他方、日本の投資家の中でも「円」以外の通貨での価値最大化を目標とするポジションを持たれている方がいます。

例えば、生活拠点が英国と日本で半々なので「英ポンド:日本円を50%:50%の基準に価値の最大化を目指したい」という生活のグローバル化に伴うニーズです。

他にも、日本という国家自体のリスクから自身の投資資金を回避させるため、米ドルでの価値最大化の投資ポジションを一部で持っていたいニーズもあります(このようなケースでは海外金融機関を活用するのが一般的ですが)。

このような資産運用を行う上で最大化を目指す基準通貨の選択を「ベース・カレンシー・ストラテジー」と私は呼んでいます。

ここで「ベースカレンシーストラテジー」と日本から単に外貨建て資産に投資をすることでは同じではないかと思われた方もいるでしょう。

あくまで一例ですが「平均・分散アプローチ」により資産配分を決定する場合を考えると、「ベース・カレンシー」によって各資産で計測される「為替考慮後」の「リスク」と「相関」異なり、さらにはその結果、資産配分にも影響していくことが分かると思います。

(筆者のケース)
私の場合は、現在の居住地は「シンガポール」です。日本には年に数か月の滞在をしていて、集中的に仕事をしたいときは、タイ、マレーシア、台湾などのワーキングスペースに籠(こも)るようなライフスタイルです。

・生活資金(現金)については「日本円、米ドル、シンガポールドル」を概ね3等分で保有しています。

・資産運用における「ベース・カレンシー」は「米ドル:日本円」について「50%:50%」を基準に考えています。

なお、その結果として、運用資産については主に米国株への等金額投資を16年以上続けています。これは「米ドル:日本円」のどちらの通貨に基準に価値の最大化を検討しても、現時点においても、米国株を中心(米国株のみではない)とした等金額投資を継続すべきという「個人的」な見解が含まれます。米国市場への投資判断に関しては別の記事にて記載していく予定です。

ポイント④:実質的な居住地により税制が変わる

(日本の税制は属地主義を採用)
グローバル化の流れでもう1つポイントが税制の問題です。

原則として、日本人は税法上「実質的」に居住する国に対して納税する義務が生じます。所在地がアメリカの会社(外資系の日本法人は違います)に入社し、給料を貰ったら、アメリカに納税することになります。同様に、イギリスの場合は、イギリスに納税することになります。

注意していただきたいのが、単に1年の半分以上の日数を海外で生活するだけで、海外居住者となるわけではありません。また、住民票にて海外転出を申請しただけでも海の居住者となるわけでもありません。

あくまでも「実質的」に居住する国に納税する義務が生じます。居住国に疑義がある場合は、税務当局の「総合的」判断により「実質的」に居住している国が判定されます。(いわゆる「居住者・非居住者判定」)

詳しくは、「属人主義と属地主義について」をご参照ください。

なお、余談にはなりますが、
『仮に「義務」が生じたとしても、住民票で海外転出届を出してしまえば実態として日本からの徴収されることはない』と考えている海外ノマドワーカーを見かけることがあります。しかし、例えば、サイト運営で使われているサーバーの所在地が日本であれば、それが「恒久的施設(EP)」として認識され「海外源泉徴収税」がしっかり課税されるようなので、やはり、個人で判断せず専門家へ相談した方が賢明だと考えます。
(弊社には法律・税務関連の専門家がおりますが、上記に限っては筆者個人の見解です)

(居住地を自由に選択する時代)
当然、国家によって税制は異なります。

資産運用に関して言えば、シンガポールや香港などタックスヘイブン国の居住者はキャピタルゲイン課税、インカムゲイン課税が基本的には非課税となり、日本よりも圧倒的に有利なるといえるでしょう。

最近では、このような税制面も考慮のうえ、「ライフプラン」「人生観」「運用哲学」などを総合的に判断して、海外に移り住み、さらに自由度を増した生活をしていく選択をする方がいるのもまた事実です。

まとめ

・「日本円」で決済を行う機会が多い日本人は、概して、「日本円」を基準として価値を最大化する資産運用を行っている。

・昨今のグローバル化を受けて海外居住者が増加している。海外を拠点に生活する方は、生活資金や運用資金に対して、ベースカレンシーを日本円以外の通貨とすることも検討していく視野を持つべき。

・居住地の選択は税制面でも重要となる。「ライフプラン」「人生観」「運用哲学」に合わせて総合的に判断して自分の在り方を考えていくのもよいと考える。

~この記事の著者~

香川 功行

金融記事の執筆に関するご依頼はこちら

メールフォーム