2018-12-15

個別株式やインデックスファンドなどでの長期投資のを実戦する際、バイ&ホールド運用の方針を決めたにも関わらず、暴落への恐怖心から保有資産をつい売却してしまう(してしまいそうになる)投資家もいるようです。事後的に、売却しなければ良かったなんて結果論もちらほらと。投資家間では「売らずに我慢するにはどうすれば?」という話も浮上しているようです。

感情に基づく投資判断は間違いもと

売らずに「我慢」という「我慢」という言葉には、根本的な間違いが隠れていると考えます。それは投資判断が「感情」により支配されすぎているという点です。投資家は「我慢」により保有継続を判断するべきでも「失望」により売却を判断するべきでも「希望」により購入を判断するべきではありません。あくまでも、投資判断は投資家自身が立てた「見通し」と「計画」に基づいてすべきものなのです。

長期のバイ&ホールド運用を実践しようと考えたのであれば、事前に投資家自身が「見通し」や「計画」を立てたことでしょう。「世界株式の長期的な期待リターンは5%前後に収まると想定して、短期的な市場変動に影響されることなく、世界株のファンドでのバイ&ホールド運用を実戦しよう」というように、あまり複雑に考えなくていないとしても「見通し」や「計画」をイメージされていると思います。このケースであれば、投資家の見通しは「世界株式の期待リターンが約5%」計画は「(期間は不明ですが)長期でのバイ&ホールド運用」となるのでしょうか。あくまでも例示ですが。

基本的に、投資判断は、この投資家自身の「見通し」が変わった時、あるいは、「計画」を変えざるを得なくなった時に行うべきです。決して、市場の変動対して不安に感じたというような「感情」に基づいて行うべきではありません。

「ほったらかし」ではなく、適度にマーケットに向き合うべき

ただ、日々流れる悲観的なマーケットニュースやボラティリティの急激な上昇など「感情」に振り回されずに、合理的な判断することは実は簡単ではありません。「放置」しておけばいい、という説明も巷ではあるようですが、個人投資家が運用期間にマーケットの情報から離れていたところで、ある時突然、市場の大幅な下落のニュースを聞いたり、景気に対してネガティブな記事を目にしたりすれば、驚くのは無理もありません。

私は、資産運用を実践する以上、適度にマーケットに向き合って、運用期間中も資産運用や投資対象への理解を深めていったほうが良いと考えています。人間、知らないことこそ怖いものはありません。

「具体的に何すればいいの?」って思われるかもしれません。もし私が個人投資家に提案をするのであれば、市況日記をつけることをお勧めします。週一回の頻度で、1つの指数(例えば、NYダウや日経平均)、1つの保有資産(例えば、ファンドや個別銘柄)の①評価値と②変化率と③興味の湧いた市場ニュースの3点を「手書き」で記録していくだけです。普段使っている手帳があれば、週1でどこかのスペースにメモする程度で構いません。

「週1回メモをするだけ?」と思われるかもしれませんが、意外と効果があります。まずは、ある程度のマーケットの変動やニュースに慣れることができます。半年も続ければ、日々の市況ニュースなどは長期投資には雑音にすぎないと気がつくことができることでしょう。

市況やニュースは毎日見ていてそんなことは不要と思われた方も多いことでしょう。しかし、週に5分程度の時間しかかりませんので、騙されたと思ってやって欲しいところです。人間は忘れる生き物です。マーケットの調子が良い時は、過去に経験した暴落時の記憶が薄れてしまうもので、習慣化できればいい気づきが得られるはずです。

事実、この市況日記は、以前よりも実践者は少なくなりましたが、一時代前のファンドマネジャーが実践していた習慣でもあります。当時は、毎日同じ時間に、数種類の株式指数、金利指標等のデータをメモをし、併せて気になるニュースとその感想などを記入してるファンドマネジャーがいたものです。主にアクティブマネジャーがマーケット感覚を養うための習慣ですが、長期投資を実践する個人投資家の皆さまにも有益だと思います。

もちろん私も長期にわたり実践しています。手書きで記録するという作業を習慣にして、その記録を時折見返したりすれば、過去のマーケットの記憶が鮮明になるのです。特に「あの頃の市況環境で自分はこういう気持ちになったな」というようなことが振り返りやすくなります。また、余談ではありますが、過去の自分の感情をいつでも振り返ることができるので、実はご自身でもぼんやりとしかイメージできていなかったリスク許容度がより明確に認識できることも期待できます。

まとめ

バイ&ホールド運用は、購入して保有を継続するだけという簡単なものではなく、購入した後に売却を実施しないという判断の連続とも言えます。そして、あくまでも、売却を実施しないという判断は「感情」ではなく、ご自身の「見通し」と「計画」に基づいて行わなければならないということを忘れないでください。つまり、どんなに短期的なマーケット変動に不安になったとしても、当初の「見通し」と「計画」に変更がない限りは、絶対に売却すべきではありません。

長期のバイ&ホールド運用だから「放置」というスタンス(心構え)よりも、適度にマーケットと向き合っていく方が、長期的には「感情」に振り回されない資産運用が実践できると、私は考えます。マーケットへの向き合い方や投資対象への理解の深め方については、上記で説明した市況日記を(個人的には)お勧めします。もちろん、それ以外の方法でも全く問題ありませんが、何らかの形で市場変動やニュースなどに慣れていくことは、投資スタイルに関わらず必要なことでしょう。
どうか多くの投資家の皆さまが「感情」に振り回されない長期的な資産形成ができますように。

~この記事の著者~

香川 功行

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