2018-08-25

足元、アメリカ-トルコ間の外交問題により、高金利通貨の代表格であるトルコリラの下落が続いています。10年前にはトルコリラの対円レートは90円台でしたが、2018年8月の最安値では16円を割り込む水準にまで落ち込みました。

トルコリラ暴落は日本にとって対岸の火事ではなく、未だに多くの日本の個人投資が高金利の魅力に惹かれトルコリラ建て金融商品を保有していると推計されています。直近の暴落時には、ネット上でも「大損をしてしまった」という悲劇の書き込みで溢れかえっていました。

今回は、トルコリラで損をしてしまった日本人投資家の皆さまに向けて少しでも有益なお話をご提供できればと思い記事にさせていただきました。

まずは気持ちの整理から

現在の「含み損」は、人によって「金額」や「保有資産に対する割合」はそれぞれ異なると思いますが、総じて後悔されている方がほとんどではないでしょうか。場合によっては、大金をトルコ建て資産に投じてしまい、相当な生活への負担が生じてしまい疲弊されている方もいるのではないかと思います。

しかし、過去ばかり見ていても何も始まりません。
過去から学び行動に移さなければ何も変わりません。

心が過去の後悔の方向に向かうのは当然です。筆者もファンドマネジャー時代に様々な「失敗」をし、沢山の「苦しみ」を味わいました。しかしながら、過去にとらわれすぎると「今」を十分に生きることはできません。人間は「今」を生きるものです。後悔から解き放たれるためにも、今はまず冷静さを取り戻し、しっかりと考えたうえで次の行動を決定していきましょう。

くれぐれも「含み損」を取り戻さなければと感情的になり、さらに高リスクの投資に足を踏み入れることがないようにしてください。その場合、得てして高い確率でより悲惨な結果を招いてしまうものです。兎にも角にも、まずは「冷静」になることが重要です。

深呼吸をして、冷静になりましょう。決して感情的にはならないでください。そして、この記事を読みながら客観的にご自身が投資に至ったプロセスと現状を確認し、次の行動を考えていきましょう。

少し精神論に近いことを申し上げていますが、プロアマ問わず、そして投資に限らず何事においても、精神面での切り替えは重要です。

「投資に至ったプロセス」と「現状」の把握

(投資時点について)
筆者の想像によるところもありますが、トルコリラ建て金融商品を保有されている投資家は、金融商品についてあまり勉強せず「高金利」であることに惹かれ投資した「だけ」なのではないでしょうか。加えて、トルコリラ建て資産、やトルコリラの対円のチャートを見て「右肩下がりだから、そろそろ反発するのでは」と感じて投資に踏み切った方もいるのかもしれません。

(以降、理論的な記述を出来るだけ避けて簡略化して説明します)
トルコもそうですが、高金利の国はインフレ率も高いことが一般的です。インフレ率の高い国の通貨は、減価の圧力を受けます。長期的には、高金利分の利益は、為替による損失でおおむね相殺されることになります。

『それでも、以前に別の高金利通貨の金融商品に投資した時は儲かった』と言われる方もいるかもしれません。

確かに、運用成果も時として重要です。しかし、今回の当記事の読者対象となる投資家の皆様においては『投資時点において合理的な判断をしているのか』により着目して欲しいと考えます。

まずは、上述の「為替レートの変動要因」のような一般的な「ロジック」を勉強しましょう。そして今後は、基本的な知識を身に付けたうえで『投資時点において合理的な判断』をご自身なりに積み上げていくべきです。

(保有継続について)
さらに、現時点でもトルコリラ建ての金融商品を保有している投資家の皆様については、心理的バイアスにより、客観的な判断ができずロスカットできずにいると思われます。

トルコリラは比較的変動性が高い通貨なので、下落基調となるなかでも短期的に特に大きく反発する局面があります。この反発を見て、「今度こそ、この時点からトルコリラが上がり続けるのではないか」という発想がチャートの反発を見る度に頭に浮かんでいたりしていないでしょうか。

あるいは、マーケットを見ていくなかで漠然と「トルコリラ高に動いて欲しい」という「投資根拠」とは全く関連のない「希望」を抱いてはいないでしょうか。

投資は「希望」的観測で行うものではありません。投資家自身が「根拠」に基づいて行うべきものです。トルコの政治状況等に関してネガティブなニュースが流れるているなかで、客観的に判断すれば保有を継続すべきではないと認識しているはずのに、根拠のない「希望」にすがり今に至ってはいないでしょうか。

確かに、ロスカットは過去の自分に対してを否定する行動で、精神的に負担になるでしょう。過去の間違いを認めたくない気持ちもあるかもしれませんが、こういう時こそ心理的バイアスに流されず合理的な判断をするべきなのです。

(トルコの現状)
トルコの現状ですが、政情が不安定であることはニュース等で既にご存知のことだと思います。高インフレ、経常赤字、対米関係の問題など悪材料を挙げればきりがありません。トルコは民間債務も大きく「デフォルトリスク」も懸念されている状況です。

歴史的にみれば、新興国通貨が暴落する典型的なパターンにトルコリラは陥りつつあります。

具体的には、外貨準備高に比べて、外貨建て債務額が高い国家の通貨は売られます。通貨が下落すれば、自国通貨での返済負担がその分増加し、返済負担が増加すれば、国の財政状況も悪化します。結果、通貨が売られ、通貨安のスパイラルに陥るというパターンです。

その過程で新興国の通貨が投機筋のターゲットになることもありますし、そうなると通貨安は歯止めがかからず回復の余地はなくなります。通貨安の影響は、関連性の高い国へと波及していくでしょう。

「投資継続」か「売却(ロスカット)」するかの判断

上記からご自身の反省点を見つめ直し、トルコの現状を十分に把握したうえで、今後の投資方針を客観的に考えていきましょう。

投資は自己責任です。今後の投資の判断はご自身で行うしかありません。

判断基準としては『上述の状況を理解した現時点においても、トルコ建ての投資対象に投資を「行うのか」それとも「行わないのか」』の2択で考えると心理バイアスに流されにくいと思います。

もし現時点においても「投資をする」と判断するのであれば「投資継続」そして「投資をしない」と判断するのであれば「売却(ロスカット)」という選択になると思います。

冷静になり、じっくり考えて、合理的な判断をしていただきたいと考えます。


今回、トルコリラの暴落で大損してしまった方は、失敗から多くを学んで欲しいと思います。今後は、最低でも基本的な金融理論や金融商品の仕組みが理解できるようになってから、腰を据えて、資産運用を再開していくべきだと考えます。

もちろん、資産運用の再開後も、大金を投じて大損を被ったら、高い勉強代を払うことになってしまいます。勉強したといってもその内容の理解が十分でないことも多々ありますので、特にリスクの高いものに投資する際は、少額から行うのことをお勧めします。

~この記事の著者~

香川 功行

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